2015年10月2日金曜日

ドラムのトリガーについて・後半(実践編)

ドラムのトリガーについて・前半(基礎知識編)

前半ではトリガーについての基礎知識を書きましたが、後半では実践的なことに触れていきます。

TRIGGER2Cubase Pro 8の両方で解説を。

Cubaseはバージョン6あたりからからヒットポイントを検出する機能が付いているはずですが、バージョン8とは表示や操作方法が異なるかもしれません。

システム毎に使い方は異なりますが、どれも同じような概念だと思うのでご参考までに。



■TRIGGER2

トリガーしたいトラックにTRIGGER2をインサート。

起動画面が表示されたら左側にある「Browser」をクリックし、サンプル名を画面下にある任意のパッドのような空白部分にドラッグ。





サンプル音をチェックしたい場合は「Audition」をONにしてからクリックするとサンプル音が鳴ります。





次に、画面左側で「Browser」から「Triggering」に切り替えてサンプル音の詳細を設定。





ここでもミュートがかかっていないトラックのパッドをクリックすると音が鳴ります。

プラグインへの入力レベルを感知するため、元音のインプットレベルで画面の波形が適切な大きさになるまで上げる必要があります。





波形が小さすぎると検出の精度も下がるので、インプットを上げすぎず、波形がなるべく大きくなるように設定するという感覚。

インプットレベルが調整できたら、DETAILのパラメーターで閾値を適切に設定。





画面の横線2本の位置が縦に変化し、ヒットポイントが検出された部分は縦線が入る&アタックポイントがオレンジ色になるので視覚的にもわかりやすいです。






SENSITIVITYというパラメーターは検出精度を調整する値で、50ぐらいが基本、90以上だとゴーストノートの検出も可能とマニュアルには書いてありますが、正確にニュアンスまでコピーするのはかなり難しいですね…。





「View Curves」の細かいパラメーターをいじると、さらに細かい条件でトリガーすることができます。






アウトプットセクションで元音とサンプル音のバランスと最終的なアウトプットレベルが決められ、その後は次のプラグインスロット…という流れで音が出ます。





TRIGGER2の後に直接プラグインをかけるのもよし、一度オーディオデータとして書き出して別トラックとして扱うのもよし。

ちなみに、MIDI CAPTUREモードでMIDIデータの検出が可能です。





ホストアプリケーションを再生し、検出が終わったら「DRAG ON TRACK」ボタンをホストアプリケーションの新規MIDIトラックにドラッグするとデータが読み込まれるみたいです。

次で説明しますが、僕はCubaseユーザーなのでこの機能は使わないでしょうw



■Cubase

トリガーしたい音の波形をダブルクリックし、サンプルエディター画面(波形が拡大されて出てくる)を表示。

同画面の左側に「ヒットポイント」という部分があるのでクリックし、ヒットポイントの編集機能をオンに設定。





スレッショルドレベルを下げていくと、波形内に縦線がヒットポイントとして現れます。

Cubaseは再生せずにヒットポイントがわかるので大変便利なんですよ。





ざっと波形をチェックして、検出漏れがある場合は手動でポイントを個別追加し(公式サイトの説明)、検出ポイントがOKであれば「MIDIノートを作成」をクリック。

「ダイナミックベロシティー」で書き出すとオーディオの強弱がMIDIにも反映され、「設定したベロシティーに変更」で書き出すと任意の条件で書き出せます。

CubaseもTRIGGER2と同じで、検出精度を上げるためにトリガーするオーディオトラックのレベルを適正に設定する必要があるのですが、コピートラックを作ってノーマライズし、そのデータからヒットポイントを検出するというやり方が最適だと思います。

書き出したMIDIデータだけでは音が鳴らないので、付属のサンプラーやBFDなどのドラム音源で任意の音をアサイン。

MIDIだとサンプルの選択肢が増えるし、データの受渡しも簡単ですよね。



■小技

TRIGGER2は専用のエディターを使えば、同プラグインで読み込めるサンプルデータを自分で作れます。

個人的な構想ですが、ドラムを録り終わった後にスネアだけ、バスドラムだけ…という具合に1パーツずつ何発かドラマーに叩いてもらい、その中で一番良かった音をトリガーのサンプルとして使おうかなと思っています。

DAWでそれをやるならサンプラーで代用できますね。

今度実践でやってみるつもりで、そのサンプルが公開できるといいんですけどね。

そのまま使うと曲調に合わない場合が多いので、違うサンプルを同時発音したり、同じトラックを作ってそれぞれに別な処理をして太くする方法もあるのですが、それは今度記事にすることにします。



■まとめ

システムに関係なく、トリガーはインプットレベルと検出の閾値を適正に設定し、曲に応じてどれぐらいの強弱を付けるのか(または一定にするのか)、原音とサンプルをどれぐらいの割合でミックスするのか、この2点がポイントになると思います。

前編で例に挙げたChris Loard-Alge氏のようなパツパツの音にするなら、100%サンプル音でベロシティーは一定にするといいです。

サンプル音源としてはTRIGGER2以外にも色々選択肢があり、それぞれで得意ジャンルが違うはず。

システム毎にデモ音源が公開されていると思うので、ぜひそれを聴いて自分に合ったシステムを探してみてください。

レコーディングに関してスポットを当てて書きましたが、専用の機材を揃えればトリガーはPAでも可能です。

生音をエディットすることに対して賛否両論あるかと思いますが、個人的にはそういう音作りが必要な場合もあり、音作りの幅が広がる可能性を考えると特に抵抗感はありません。

ただ、前半でも書きましたが、トリガーありきで臨むのはあまり良くないので、使いどころはしっかり見極めましょう。

僕の個人的な手法を書きましたが、もっといい方法があるはずなので勉強してみようと思います。

ドラムのトリガーについて・前半(基礎知識編)

SLATE DIGITAL TRIGGER2を導入しました。






その名の通り、トリガーと呼ばれるテクニックを駆使するためのプラグインです。

トリガーは他にも様々なプラグインが出ていますが、TRIGGER2が自分の趣向にマッチしたのでこれを選びました。

ドラムで使うことが多いテクニックなので、そこにスポットを当てて解説していきます。



■トリガーとは何ぞや

まず、トリガーとはどういうテクニックなのか。

ざっくり言うと、生音をそれと同じタイミングであらかじめ録音されたサンプル音に差し替える技術です。

製品名にもなっていますが、英語で表記すると「trigger」、つまり引き金を引くという意味で、その引き金に該当するのが生のアタック音。

バスドラムを例にすると、ペダルを踏んでビーターがヘッドに当たった瞬間をアタックとして検出し、そのタイミングでアサインした音を鳴らすという具合。

録音された音にプラグインをかけて検出&発音する方法と、ドラムにアタックを検出するマイクのような機材を取り付けて発音する方法があります。







ライブで使う人もチラホラいますね。

電子ドラムもトリガーの1つで、パッドを叩くことでレベルを検出&発音するシステムです。



■なぜトリガーが必要なのか①

そもそも、そんな面倒なことをして何の意味があるのかわからないという方もいると思います。

実は生音のドラムレコーディングにおいては特に意味があるんです。

マルチマイク(ここではそれぞれのパーツにマイクを立てるという意味)でドラムを録音したことがある方ならわかると思いますが、どのマイクにも必ず他の音が被りますよね。

特に顕著なのがスネアで、バスドラムの音やシンバルの音がけっこうな音量レベルで被っているはず。

スネアの音をもっとヌケさせたければEQで8KHz以上を上げる、音量レベルをなるべく均一に揃えたければコンプでレベルが大きい部分を潰して小さい部分を持ち上げる、などの処理をするのが一般的でしょうか。

ここで肝心なのは、スネアのマイクに被った他の音にもEQやコンプがかかるということです。

ただでさえ大きく被っているバスドラムやシンバルが更に大きなレベルで出力されるので、位相や定位にも影響して非常にミックスしづらい。

ゲートで切るという手段もありますが、ある程度一定の音量で叩く技術のあるドラマーでなければ適切な効果を得るのが非常に難しいんです。

そこでトリガーの出番というわけ。

サンプル音のスネアには他の音が被っていないので、トリガーすることで他の音に影響を与えず、一音一音がクリアなミックスが可能になります。



■なぜトリガーが必要なのか②

トリガーを使うのにはもう一つ意味があります。

それでしかできない音作りが可能になること。

当然だけど、生のドラム録りはMIDIと違って他の音色に変更することができません。

後で「違うキットやチューニングにしておけばよかった…。」ということも起こり得ます。

最近のトリガーのプラグインに入っているサンプル音は、プロのドラマー、チューナー、エンジニアが音質にこだわって録音されたものが多い。

ドラムのチューニングは本当に難しく、リハスタなどのキットで録音する場合はこのクオリティに近付くのは困難です。

プロの作った音が使えるのは非常に大きなメリットだと思います。



■トリガーされた作品を聴きたい!

どんな作品でトリガーが使われているのか。

世界一有名なエンジニアの一人、Chris Lord-Alge氏のミックスを聴けばよくわかりますよ(他にもたくさんいるけど、個人的好みで)。

2000年以降は特に、同氏のミックスでトリガーされていない音源はないんじゃないかと思います。

代表作はグラミー賞を獲ったGREEN DAYの「American Idiot」ですかね。

典型的なトリガーサウンドで、非常にわかりやすい。

他にもアメリカのポップスはトリガーされた作品が多いので、そこを気にして聴いてみるのも面白いと思います。



■ただし、乱用は禁物!

ここまで書くとメリットしかないのでは?と思われるかもしれませんが、個人的に一番注意しておきたいことがあります。

それありきで作品を作らない。

これすごく重要。

その作品やプロジェクトに対して本当に必要かどうかという基準で使う必要があると思っていて。

トリガーを使うデメリットとして、ドラマーの叩いたニュアンス通りではなくなることが挙げられます。

前述したGREEN DAYみたいな音楽には非常にマッチしているので、レベルを一定に揃える音作りもありでしょう。

しかし、これがニュアンス重視の曲だったとしたら。

ある程度の強弱が反映されるとはいえ、所詮MIDIの127段階で表現されるベロシティーにすぎません。

それで上手くいく場合もあるとは思いますが、この場合は特に生音でどうにかするのが基本です。

何でもかんでもトリガーすればいいというわけではなく、音楽的であるかどうかを重視して選ぶべですね。



ということで、前半は基礎知識編でした。

実践編は後半へ続きます。

ドラムのトリガーについて・後半(実践編)

2015年6月4日木曜日

Cubase Pro 8でいきなりトラブル発生!

Cubase Pro 8を使い始めて1ヶ月半ほど経ちましたが、いきなり最初でトラブルに遭ってしまいました

サードパーティーのVSTプラグインを認識しないという現象が起きてですね

認識されないプラグインがある場合は「プラグインマネージャー」からパスを設定してあげると解決するようですが(下記記事を参照)、なぜかこの方法で解決できない

【Cubase 8シリーズ】VSTプラグインが認識されず、使用できません。







同じバージョンで同じプラグインを使っている方に聞いたら読み込めたと言っていたので、これは自分のシステムに問題があるのは確実ということです

結局原因がわからずOSのクリアインストールという荒療治で解決しました

1つ疑わしいのは、当時のMac内にはCubaseの他にPro Tools 10、11とLogic Pro Xが入っていたという点

同一コンピュータ内に同じようなソフトが混在しているとトラブルが起きる可能性があると聞いたことがあるのですが、それではないかと思っています

ということで、新システムでは使うことがないであろうLogicは除外しました

概ねシステム構築が終わり現在は全く問題なく動いているので、現状のバックアップを取らないといけませんね

しかし、腑に落ちないな…

2015年4月15日水曜日

DAWソフトによる音の違い

【DAWソフトで音は違うのか?】

コンピュータで音楽制作をやる場合「DAWソフト」を使う必要があります

DAWとは「Digital Audio Workstation」の略称で、一般的にDAWソフトとはオーディオやMIDIなどを録音・操作するアプリケーションのことを指します

メジャーどころはPro Tools、Cubase、Logicあたりでしょうか

よくソフトによって音が違うと言われますが、それを疑う人もいると思います

そこでちょっとした実験をしてみました


【実験】

Pro Tools 10でミックスダウンした同一のデータ(WAV、24bit/48KHz)を、Pro Toos 10とLogic Pro Xで同じ設定にしてオーディオCD向けのマスタリングを施すとどうなるか

作業方法は以下の通りです


① セッションスタートの位置にデータをインポート、フェーダーは0db固定
② プラグインはWAVESのREQ6、C4、L2の順でインサートし、どちらも設定は全く同じにする(Pro Tools側で設定した数値をLogicに反映させています)
③ バウンス時の条件は、WAVで16bit/44.1KHzにエンコード、オフラインバウンス未使用(リアルタイムで書き出し)、バッファサイズは1024、自動遅延補正は最大値
④ 書き出した両ファイルをPro Tools 10のセッションスタート位置に取り込み、フェーダーは0db固定にして聴感上で違いを確認
⑤ 両方に付属プラグインのTrimをインサートし(両方に立ち上げるのはなるべく同じ条件にするため)、同時に再生した状態でどちらか一方の位相を反転させる
⑥ ⑤の状態でアナライザーを使い周波数解析











RTASとAUで形式の違うプラグインを使っているから単純にDAWの再生音のみの音質比較にはなっていませんが、プラグインを使わない人はそういないと思うので実践形式でやりました

テスト音源はドラム、ベース、ギター、ボーカルのオーソドックスなロックバンドの音源です

さて、結果はどうなったと思いますか?


★聴感上
・Pro Toolsの方が高域成分が強く聴こえた(これは僕の主観)
・逆相にしたら高域成分(スネアのスナッピー、キックのアタック音、シンバル、ギターのシャリシャリ感など)が少し残っており、他の帯域は全く聴こえない
・ここは手順にないけど、試しにPro Tools側にEQを立ち上げ、残っている成分の帯域を0.1~0.2dbカットしたらほぼ音が消えた


★アナライザーの解析結果
・4KHzあたりに-78db前後の成分があり、4KHz以下は全く反応なし
・7KHzより上は-73db付近まで成分が残り、20KHz手前で-60db超えのピーク成分が





【実験結果からわかること】

この実験の結果、LogicよりPro Toolsの方が高域が強いということが判明しました

僕の聴感上の結果はともかく、逆相にした状態でアナライザーのメーターが振れたということは完全に打ち消し合っていないことになります

これはLogicがハイ落ちしているのか、それともPro Toolsにハイが足されているのか…残念ながらこの実験では証明できません

プログラムのことがわかるレベルの人じゃないと証明するのは難しいかもしれないです

そして、結果が違うことは証明されたけど優劣をつける話ではないですね

あえてつけるとしたら個人の主観(好み)になってしまいます

これを読んだ方はどう思うでしょうか



【原因は何なのだろう】

音が違うということは必ず何かしらの原因があります

よく耳にする主な原因(推測)はこの3つじゃないでしょうか


・レンダリングエンジンやエンコーダの性能差
・プラグインスロットやミキサーなど内部演算の精度
・プラグイン形式の違い






僕も概ね同意見ですね

先ほどは触れませんでしたが、音質だけでなくバウンス後のファイルの長さも違って、なぜかPro Toolsの方が3サンプル長いという結果になりました





コンピュータの演算はけっこういい加減だということがわかる

Pro Tools 10は32bitアプリ、Logic Pro Xは64bitアプリなので、こういう要素も絡んでいるでしょう

同じソフトでもバージョンによって音が違うというのは、内部演算の精度が変わっているからだと思います



【原因をより掘り下げてみる】

そして非常に細かいですが、ここまで来たらバウンス時のコンピュータにかかっている負荷も関係あるのではないかという気もしていて

バッファサイズやCPU・メモリの使用率などが絡んでくるのかもしれません









仮にこれらが本当であれば、同一ソフト内・同一セッティングでリソースの消費状況による音の違いが再生毎に生じることも考え得るわけです

これらを検証している人っているんですかね?

やっている人がいたらぜひ結果を見てみたいものです

それに意味があるかどうかは置いといて、一つの事実を証明することは大事だと考えます

どうしても気になる人もいるでしょうから

ものすごく時間がかかるだろうけど、1パターンで10回ずつ書き出して逆相実験というのもやってみないといけないですね



【最後に言っておきたいこと】

こう言ったら本末転倒になってしまうけど、この微々たる差が気になる人は気にすればいいし、気にならない人は気にしなければいいです

メディアがテープからCDに変わったぐらいの大きな変化ではないので、違いがわからない人も多いと思う

僕が今回検証した理由は、現在互換性の問題を解決するために複数のソフトを使い分けており、一緒に制作するミュージシャンから「どう違うの?」と聞かれた時、主観・論理の両面から明確に答えられるようにしたかったからです

実はそんなに気にしていませんw

音質に懐疑的な意見が出ているPro Toolsを使っているのも、業界標準で互換性も高いし、何より使い慣れてしまっているからです

ツール選びで一番大事なことは、いかに自分の目的に合っているかではないでしょうか

音質にこだわりたいなら音質重視のソフトを選べばいいし、それよりも編集機能やMIDIの使いやすさが大事だという人はそういう作業に向いているソフトを選べばいいと思う

こればかりは使ってみないとわかりませんね

勘違いしたらいけないのですが、いいミックスに必要なのはツールでなく感性と技術です

参照記事
「レコーディングって何するの?」

ハードでもソフトでも楽器でも何でもそうですが、基本的なことができないとツールのポテンシャルは存分に発揮できません

音質改善には基本的な技術や感性を身に付けることが最も重要であることを忘れてはいけないのです



今回は音源サンプルを付けていませんが、Cubase Pro 8を導入したらサンプル付きで主要3ソフトの違いを公開しないといかんな

以上、DAWソフトには微妙な音の違いがあるというお話でした

2015年4月3日金曜日

センスはコピーできないんです!

ブログ開設にあたり、何人かのミュージシャン友達にどんな内容を書いて欲しいかを聞いてみました

一番多かったのが基本の音作りに関することでしたね

なんとなくEQやコンプをかけており、果たしてそれでいいのか自信がないという方が多いのが現実のようです

僕もまだまだ勉強中ですが、そういう悩みを抱えている方のヒントになるようなコンテンツを作っていけたらなと思っています



今はマスタリング手法に関する記事を書いており、プラグインの設定画面や音の変化を確認できるオーディオファイルも準備中です

セッティングは絶対見せないという人もいると思いますが(ミキサーをシートで覆い隠すエンジニアもいたとか)、個人的には全く問題ありません

その都度音の処理方法は変わるので、僕の開示するセッティングを他で真似してもあまり有効だとは言えませんから

大事なのは「なぜそこでその技を使ったのか、どれぐらいの加減で処理すればいいのか」を判断できるセンスです

設定はコピーできてもセンスはコピーできませんよね

自分の耳で判断できる感覚を養い、技の引き出しを増やすことが大事なのではないでしょうか



記事の技術解説は理屈っぽくなる時もあると思いますが、なるべく難しくならないよう図解やサンプルを積極的に取り入れた内容にするつもりです

そんな感じで、今後ともよろしくお願いします!

2015年4月1日水曜日

マスタリングって何するの?

【作業目的】
一般的に言うマスタリングとは、正確には「プリマスタリング」の工程を指します(世の便宜上、以後このブログではマスタリングと呼ぶ)

マスタリングは、ミックスダウンした2ミックス全体のサウンドを調整する工程になります

イメージしづらい方はこう考えて下さい

例えば10曲入りのアルバムを作る場合、10曲それぞれで素材は異なり、当然ミックスも違うので全体の音量レベルや音の質感は揃っていません

同じCDに入れるのに統一感がないと変なので、マスタリングはそれらを均一化するために行います(曲間の長さの調整も含む)

いわば仕上げの作業であり、料理で例えると出来上がった料理を皿に盛り付け、見た目を整える作業と言えばわかりやすいと思います


【突然ですが質問】
ここで1つ、読んで下さっている方に質問

調理が終わった後に派手な味付けや食材の加工をしますか?

しませんよね

する必要があれば調理が失敗だったということになります

これは音楽も同じです

リスナーはマスタリング後の音しか聴けないので比較しようがありませんが、マスタリングではミックスダウンの音からガラッと印象が変わることはありません

ガラッと変える必要があるならミックスが失敗だったということです

可能であればミックスをやり直しましょう


【特殊な作業なんです】
レコーディングは素材調達、ミックスは調理、マスタリングは盛り付け

それぞれの作業には全く違った目的があり、それを他の工程と混同すべきではありません

プロの世界ではレコーディングとミックスを同じエンジニアが担当する場合はありますが、マスタリングまで同じエンジニアがやることはほぼありません

メジャー流通のCDクレジットを見てみたら、マスタリングエンジニアは違う人の名前が書いてあるはず

マスタリングは非常に特殊な作業で、他の工程とは全く違った感性や技術が必要なのです

インディーズの制作では予算の都合で全部同じエンジニアがやることが多いかもしれませんが…


【最後に】
話が横道にそれましたが、マスタリングはあくまでも微調整であることを念頭に置きましょう

余談ですが、鬼門である「音圧戦争」に関する話題は別に記事を書きます

ざっと音楽制作の工程を書いてみましたが、少しはイメージが掴めたでしょうか

我々エンジニアはこういうことをやっているのです



関連記事
『レコーディングって何するの?』
『ミックスって何するの?』

ミックスって何するの?

【作業目的】
ミックスでやる作業は色々あります

録った素材そのままでは音色や空気感、レベルバランスのバラつきがあるので、そういうことを調整して音楽的に聴きやすい状態にするのが作業目的です

3工程の中で最も音楽的な作業であり、エンジニアの色が出やすい工程ですね

【作業手順】
ここでは僕の手順を例にざっくり説明します

まずはパン(音の左右)を振り、フェーダーで大まかなレベルバランスを設定する

その後、必要な素材にEQ・コンプをかけて音の基礎を作る

基礎の音作りが終わったら、リバーブ・ディレイなどで空間を作り、場合によってはモジュレーションやフィルターなどで特殊効果を付けたりもする

音の方向性が決まったらオートメーションでレベルバランスを細かく調整し、それに合わせてエフェクトの具合も微調整

OKだったらミックスダウン(トラックダウンとも言う)

ミックスダウンとは、完成したミックスをステレオ2chにまとめて録音し直す(現代的に言うと新たにファイルを生成する)ことです

なぜわざわざそんなことをするの?と思う方もいるかもしれませんが、理由は次のマスタリングで説明します

そして非常に重要なこと

音作りはミックスダウンの時点で終わらせる

マスタリングに続きます

『マスタリングって何するの?』



関連記事
『レコーディングって何するの?』

レコーディングって何するの?

【音楽制作の一連の流れ】
音楽制作は大きく分けてレコーディング、ミックス、マスタリングの3工程があります

ご存じない方のために1つ1つ解説していきます

【作業目的】
レコーディングは何もない状態から録音をする作業で、作品の素材を収録する最も重要な工程です

ここでいい素材が録れていないと作品のクオリティは上がりません!

ミックス以降の作業でなんとかなる場合もありますが、ほとんどの場合上手くいかないでしょう

ちょっと例えが悪いですが、腐った肉はどんなに腕の立つ料理人でも美味しい料理にはできないのと同じです

いいミックスはいい素材とエンジニアの腕があってこそ

【具体的な作業】
プロの制作現場では通常、本テイクの前に「プリプロ(プリプロダクションの略)」と呼ばれる準備的なレコーディングを行います

一度曲を録音して全体像を把握し、そこからアレンジや音作りの方向性などを決めるためのレコーディングです

曲の進行ガイドとしての役割もあります

プリプロのテイクがそのままOKになる場合もあるので、本テイクを想定して音を作るのが鉄則

本テイク録りでは全部録り直す場合もあるし、必要な音を録り直したり足したり…その時々で状況は変わります

プリプロで方向性が決まったらいよいよ本テイク録り

ベーシック録音(一般的にはドラムやベースなどの基礎的な素材録り)からオーバーダビングで重ねたり、「せーの!」で一発録りをしたり、これまた方法は時と場合によります

アマチュアバンドの場合は特に、少なくともドラムとベースはアイコンタクトを取りながら一緒に演奏した方がいい結果を生むはず

オーディオ、MIDIなど、全ての素材が揃ったらミックスに入ります(編集については割愛)

『ミックスって何するの?』



関連記事
『マスタリングって何するの?』

2015年3月24日火曜日

ミックスサンプルです

最近僕がミックス&マスタリングしたサンプルです



他も色々やっているのですが、アーティストから許可を得ないといけないので順次アップします

主な機材やソフト

2015年3月現在、メインとして使っている機材やソフトを書いてみる



【PC】
 ・Mac Pro 2.4GHz Quad Core Intel Xeon Westmere ×2、RAM 6GB
 ・Mac mini 2.4GHz Core 2 Duo、RAM 8GB

【DAW】
 ・Pro Tools 10、11

【オーディオI/O】
 ・Mackie Onyx 1620i
 ・Digidesign Digi003 Rack

【オーディオプラグイン】
 ・WAVES

【ソフトシンセ】
 ・Ivory II Grand Pianos
 ・BFD Eco



主にミックスやマスタリングではMac Pro、サブでレコーディング用にMac miniを使っています

メインソフトはPro Tools 10ですが、サブスクリプション制になることを機にCubase Pro 8に乗り換えます

Cubaseに関してはまた別記事として書きますが、総合的に見るとこちらの方が自分にとって都合がいいんですよね

こんな感じで日々音楽をやっています

ひたすらテキストだけ打っていても仕方ないので、自分のミックスサンプルなどもアップしないといけませんね…

ブログ始めました!

DTMをメインとしたブログを開設することにしました

私は都内で活動しているサウンドエンジニアでございます

様々なテクニックやレビュー、普段考えていることなど、色々なことを書いていこうと思います

その他、趣味の料理やカメラ(どちらも素人ですw)などもちょいちょい出てくるかも

更新は不定期ですが、時間のある時はなるべく書くつもりです

そんな感じでよろしくお願いします!