2015年10月2日金曜日

ドラムのトリガーについて・前半(基礎知識編)

SLATE DIGITAL TRIGGER2を導入しました。






その名の通り、トリガーと呼ばれるテクニックを駆使するためのプラグインです。

トリガーは他にも様々なプラグインが出ていますが、TRIGGER2が自分の趣向にマッチしたのでこれを選びました。

ドラムで使うことが多いテクニックなので、そこにスポットを当てて解説していきます。



■トリガーとは何ぞや

まず、トリガーとはどういうテクニックなのか。

ざっくり言うと、生音をそれと同じタイミングであらかじめ録音されたサンプル音に差し替える技術です。

製品名にもなっていますが、英語で表記すると「trigger」、つまり引き金を引くという意味で、その引き金に該当するのが生のアタック音。

バスドラムを例にすると、ペダルを踏んでビーターがヘッドに当たった瞬間をアタックとして検出し、そのタイミングでアサインした音を鳴らすという具合。

録音された音にプラグインをかけて検出&発音する方法と、ドラムにアタックを検出するマイクのような機材を取り付けて発音する方法があります。







ライブで使う人もチラホラいますね。

電子ドラムもトリガーの1つで、パッドを叩くことでレベルを検出&発音するシステムです。



■なぜトリガーが必要なのか①

そもそも、そんな面倒なことをして何の意味があるのかわからないという方もいると思います。

実は生音のドラムレコーディングにおいては特に意味があるんです。

マルチマイク(ここではそれぞれのパーツにマイクを立てるという意味)でドラムを録音したことがある方ならわかると思いますが、どのマイクにも必ず他の音が被りますよね。

特に顕著なのがスネアで、バスドラムの音やシンバルの音がけっこうな音量レベルで被っているはず。

スネアの音をもっとヌケさせたければEQで8KHz以上を上げる、音量レベルをなるべく均一に揃えたければコンプでレベルが大きい部分を潰して小さい部分を持ち上げる、などの処理をするのが一般的でしょうか。

ここで肝心なのは、スネアのマイクに被った他の音にもEQやコンプがかかるということです。

ただでさえ大きく被っているバスドラムやシンバルが更に大きなレベルで出力されるので、位相や定位にも影響して非常にミックスしづらい。

ゲートで切るという手段もありますが、ある程度一定の音量で叩く技術のあるドラマーでなければ適切な効果を得るのが非常に難しいんです。

そこでトリガーの出番というわけ。

サンプル音のスネアには他の音が被っていないので、トリガーすることで他の音に影響を与えず、一音一音がクリアなミックスが可能になります。



■なぜトリガーが必要なのか②

トリガーを使うのにはもう一つ意味があります。

それでしかできない音作りが可能になること。

当然だけど、生のドラム録りはMIDIと違って他の音色に変更することができません。

後で「違うキットやチューニングにしておけばよかった…。」ということも起こり得ます。

最近のトリガーのプラグインに入っているサンプル音は、プロのドラマー、チューナー、エンジニアが音質にこだわって録音されたものが多い。

ドラムのチューニングは本当に難しく、リハスタなどのキットで録音する場合はこのクオリティに近付くのは困難です。

プロの作った音が使えるのは非常に大きなメリットだと思います。



■トリガーされた作品を聴きたい!

どんな作品でトリガーが使われているのか。

世界一有名なエンジニアの一人、Chris Lord-Alge氏のミックスを聴けばよくわかりますよ(他にもたくさんいるけど、個人的好みで)。

2000年以降は特に、同氏のミックスでトリガーされていない音源はないんじゃないかと思います。

代表作はグラミー賞を獲ったGREEN DAYの「American Idiot」ですかね。

典型的なトリガーサウンドで、非常にわかりやすい。

他にもアメリカのポップスはトリガーされた作品が多いので、そこを気にして聴いてみるのも面白いと思います。



■ただし、乱用は禁物!

ここまで書くとメリットしかないのでは?と思われるかもしれませんが、個人的に一番注意しておきたいことがあります。

それありきで作品を作らない。

これすごく重要。

その作品やプロジェクトに対して本当に必要かどうかという基準で使う必要があると思っていて。

トリガーを使うデメリットとして、ドラマーの叩いたニュアンス通りではなくなることが挙げられます。

前述したGREEN DAYみたいな音楽には非常にマッチしているので、レベルを一定に揃える音作りもありでしょう。

しかし、これがニュアンス重視の曲だったとしたら。

ある程度の強弱が反映されるとはいえ、所詮MIDIの127段階で表現されるベロシティーにすぎません。

それで上手くいく場合もあるとは思いますが、この場合は特に生音でどうにかするのが基本です。

何でもかんでもトリガーすればいいというわけではなく、音楽的であるかどうかを重視して選ぶべですね。



ということで、前半は基礎知識編でした。

実践編は後半へ続きます。

ドラムのトリガーについて・後半(実践編)

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