コンピュータで音楽制作をやる場合「DAWソフト」を使う必要があります
DAWとは「Digital Audio Workstation」の略称で、一般的にDAWソフトとはオーディオやMIDIなどを録音・操作するアプリケーションのことを指します
メジャーどころはPro Tools、Cubase、Logicあたりでしょうか
よくソフトによって音が違うと言われますが、それを疑う人もいると思います
そこでちょっとした実験をしてみました
【実験】
Pro Tools 10でミックスダウンした同一のデータ(WAV、24bit/48KHz)を、Pro Toos 10とLogic Pro Xで同じ設定にしてオーディオCD向けのマスタリングを施すとどうなるか
作業方法は以下の通りです
① セッションスタートの位置にデータをインポート、フェーダーは0db固定
② プラグインはWAVESのREQ6、C4、L2の順でインサートし、どちらも設定は全く同じにする(Pro Tools側で設定した数値をLogicに反映させています)
③ バウンス時の条件は、WAVで16bit/44.1KHzにエンコード、オフラインバウンス未使用(リアルタイムで書き出し)、バッファサイズは1024、自動遅延補正は最大値
④ 書き出した両ファイルをPro Tools 10のセッションスタート位置に取り込み、フェーダーは0db固定にして聴感上で違いを確認
⑤ 両方に付属プラグインのTrimをインサートし(両方に立ち上げるのはなるべく同じ条件にするため)、同時に再生した状態でどちらか一方の位相を反転させる
⑥ ⑤の状態でアナライザーを使い周波数解析
RTASとAUで形式の違うプラグインを使っているから単純にDAWの再生音のみの音質比較にはなっていませんが、プラグインを使わない人はそういないと思うので実践形式でやりました
テスト音源はドラム、ベース、ギター、ボーカルのオーソドックスなロックバンドの音源です
さて、結果はどうなったと思いますか?
★聴感上
・Pro Toolsの方が高域成分が強く聴こえた(これは僕の主観)
・逆相にしたら高域成分(スネアのスナッピー、キックのアタック音、シンバル、ギターのシャリシャリ感など)が少し残っており、他の帯域は全く聴こえない
・ここは手順にないけど、試しにPro Tools側にEQを立ち上げ、残っている成分の帯域を0.1~0.2dbカットしたらほぼ音が消えた
★アナライザーの解析結果
・4KHzあたりに-78db前後の成分があり、4KHz以下は全く反応なし
・7KHzより上は-73db付近まで成分が残り、20KHz手前で-60db超えのピーク成分が
【実験結果からわかること】
この実験の結果、LogicよりPro Toolsの方が高域が強いということが判明しました
僕の聴感上の結果はともかく、逆相にした状態でアナライザーのメーターが振れたということは完全に打ち消し合っていないことになります
これはLogicがハイ落ちしているのか、それともPro Toolsにハイが足されているのか…残念ながらこの実験では証明できません
プログラムのことがわかるレベルの人じゃないと証明するのは難しいかもしれないです
そして、結果が違うことは証明されたけど優劣をつける話ではないですね
あえてつけるとしたら個人の主観(好み)になってしまいます
これを読んだ方はどう思うでしょうか
【原因は何なのだろう】
音が違うということは必ず何かしらの原因があります
よく耳にする主な原因(推測)はこの3つじゃないでしょうか
・レンダリングエンジンやエンコーダの性能差
・プラグインスロットやミキサーなど内部演算の精度
・プラグイン形式の違い
僕も概ね同意見ですね
先ほどは触れませんでしたが、音質だけでなくバウンス後のファイルの長さも違って、なぜかPro Toolsの方が3サンプル長いという結果になりました
コンピュータの演算はけっこういい加減だということがわかる
Pro Tools 10は32bitアプリ、Logic Pro Xは64bitアプリなので、こういう要素も絡んでいるでしょう
同じソフトでもバージョンによって音が違うというのは、内部演算の精度が変わっているからだと思います
【原因をより掘り下げてみる】
そして非常に細かいですが、ここまで来たらバウンス時のコンピュータにかかっている負荷も関係あるのではないかという気もしていて
バッファサイズやCPU・メモリの使用率などが絡んでくるのかもしれません
仮にこれらが本当であれば、同一ソフト内・同一セッティングでリソースの消費状況による音の違いが再生毎に生じることも考え得るわけです
これらを検証している人っているんですかね?
やっている人がいたらぜひ結果を見てみたいものです
それに意味があるかどうかは置いといて、一つの事実を証明することは大事だと考えます
どうしても気になる人もいるでしょうから
ものすごく時間がかかるだろうけど、1パターンで10回ずつ書き出して逆相実験というのもやってみないといけないですね
【最後に言っておきたいこと】
こう言ったら本末転倒になってしまうけど、この微々たる差が気になる人は気にすればいいし、気にならない人は気にしなければいいです
メディアがテープからCDに変わったぐらいの大きな変化ではないので、違いがわからない人も多いと思う
僕が今回検証した理由は、現在互換性の問題を解決するために複数のソフトを使い分けており、一緒に制作するミュージシャンから「どう違うの?」と聞かれた時、主観・論理の両面から明確に答えられるようにしたかったからです
実はそんなに気にしていませんw
音質に懐疑的な意見が出ているPro Toolsを使っているのも、業界標準で互換性も高いし、何より使い慣れてしまっているからです
ツール選びで一番大事なことは、いかに自分の目的に合っているかではないでしょうか
音質にこだわりたいなら音質重視のソフトを選べばいいし、それよりも編集機能やMIDIの使いやすさが大事だという人はそういう作業に向いているソフトを選べばいいと思う
こればかりは使ってみないとわかりませんね
勘違いしたらいけないのですが、いいミックスに必要なのはツールでなく感性と技術です
参照記事
「レコーディングって何するの?」
ハードでもソフトでも楽器でも何でもそうですが、基本的なことができないとツールのポテンシャルは存分に発揮できません
音質改善には基本的な技術や感性を身に付けることが最も重要であることを忘れてはいけないのです
今回は音源サンプルを付けていませんが、Cubase Pro 8を導入したらサンプル付きで主要3ソフトの違いを公開しないといかんな
以上、DAWソフトには微妙な音の違いがあるというお話でした
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