2016年7月9日土曜日

Cubase Pro 8でApollo Twin Duoを使ってみる

前のApolloを紹介した記事に引き続き、僕がメインアプリとして使っているCubaseとはどう組み合わせているのか書いてみます。



■一般的な録音時の信号の流れ

ApolloはオーディオI/Oであり、専用のDSPミキサー(Digital Signal Processorの略称)アプリで様々な信号のやり取りを管理できます。

プロセスを一つ一つ辿り、各種設定例を挙げてみます。




★DSPミキサー側


まずはApolloのアナログインプット(写真右のMIC/LINE1と2)からAD変換。

接続機材によってはOPTICAL INも使用可能ですが、今回は説明を省略します。






ギターやベースをラインで録る場合は、フロントパネルの左側に付いているギターマークのインプットに直接シールドを挿しましょう。

DIの機能が備わっており、インプットの1番に信号が割り当てられます。






その後、DSPミキサーのデジタルプリアンプ(Neve 1073)を経てプラグインスロット(UA 1176LN Legacy)へ。

必ずしもプラグインを立ち上げる必要はありません。

アンプシミューレーターもプラグインスロットにインサートします。









プリアンプに対してはできませんが、プラグインスロットの部分は録音される音に反映させるか否かを、各チャンネル毎に設定できます。


ミキサー画面左上にある表示を「INSERTS」にし、パンの上にある「INS」という部分をクリックすると「REC(録音に反映される)」か「MON(モニター音にのみ反映される)」が選べるので、任意の設定に。






ちなみにですが、DSPミキサーの「PAN(音の左右)」、「SOLO」、「MUTE」、フェーダーはモニター音にのみ反映され、録音される音には影響しません。



★Cubase側

ここから先の信号はCubaseへ渡ります。

Cubaseの上部メニューにある「デバイス」→「デバイス設定...」を選ぶと以下の画面が出るので、左側の「Universal Audio Apollo」を選び、中央上部にある「コントロールパネル」内の「Buffer Size」を最大の2048に設定。







【Buffer Sizeとは】

横道にそれますが、このBuffer Sizeをざっくり説明すると、録音する側と再生する側の処理能力バランスを調整する値です。

・数値が小さい…録音する側に能力が割り振られ、インプットのレイテンシー(信号の遅れ)が少なくなる分、再生するトラックの処理能力が下がる。

・数値が大きい…再生する側に能力が割り振られ、録音されたトラックにより多くの処理が可能になる分、入力音の処理が遅れてレイテンシーが大きくなる。


個人的な設定例ですが、DSPミキサーを使わない場合は録音時で128、録音が全て終わって編集やミックスをする場合は最大値の2048にしています。

オーディオI/Oの機種によってはダイレクトモニター機能(プリアンプの直後の音をAD変換せずにそのまま出力)が付いているものもあるので、そちらを使うのもいいでしょう。

そして、ここがDSPミキサーの一番すごいところ。

オーディオの録音時でも2048に設定してしまって大丈夫です(但し、数値を上げすぎるとボリュームのオートメーションが正しく再現されないという話もあるので、再生できるギリギリ低い値に設定する人もいるそうです)。

録音時はアナログインプットを通ってDSPミキサーで処理される音(Cubaseに入る前の音)を聞くことになります。

Apollo本体に埋め込まれているオーディオ専用のチップが超高速な処理をしてくれるおかげで、DSPミキサー側で使うプリアンプや他のプラグインなどを通ってもほぼレイテンシーは発生しません。

Buffer Sizeを上げることにより発生するレイテンシーは自動で辻褄を合わせて録音してくれるので、しっかりミックスした状態でもCubase側のプラグインを外さずに録音ができるというわけです。

また、UADプラグインの場合はPC側のリソースは一切使わず、完全にApollo側のリソースを使って信号の処理をしているので、そこそこ負荷をかけても平気でしょう。

但し、Cubase内のソフト音源を鳴らしてMIDIを録る場合は128以下にしておかないとレイテンシーが生じるので注意です。

Cubase側の処理が必要になってくるので、こればかりは仕方ありません。



本題に戻り、Buffer Sizeを設定した後の説明に入ります。

上にあるメニューの「デバイス」→「VST コネクション」で以下の画面を表示させ、「オーディオデバイス」欄が「Universal Audio Apollo」になっているのを確認し、「デバイスポート」欄(黄色い枠の部分)を「Analog1(もしくは2)」に設定。







ミキサー画面にCubaseへのインプット(画像左2つの赤いフェーダー)が表示されます。






更に画面上のメニューから「プロジェクト」→「トラックを追加」→「Audio(MonoかStereoは任意)」で録音トラック(白いフェーダー)を作り、ミキサー画面上部の「Routing」欄でそれぞれのトラックに任意のインプット(Analog1か2)を割り当てます。

この時に注意。

録音トラック(画像の白フェーダー)を録音待機状態(赤点灯)にしておくのは当然ですが、その左にあるオレンジに点灯した「モニタリング」のボタンは必ずオフ(グレーの状態)にします。





モニタリングがオンになっていると、DSPミキサーで処理した音とCubaseで処理されて遅れて出る音が同時に鳴ってしまいます。

この場合の追加説明で、画面上メニューの「Cubase Pro」→「環境設定」→「VST」までクリックし、下から2番目の「自動モニタリング」欄を「手動」に設定。






例えば「テープマシンスタイル」にしてしまうと、録音されているトラックのモニタリングが自動でオンになってしまい、先ほど書いた現象が起きてしまいます。

「手動」にしておくことで録音・再生時に関係なく常に同じ設定になるので、こうしておいた方がいいでしょう。


★Cubase→DSPミキサーへの返し

デフォルト設定では、CubaseからDSPミキサーへの返しはモニターかヘッドホンのマスターアウトプットでしかレベル調整ができません。

オーバーダビングの時は特に、プレイヤーは自分の演奏している音をメインで聞きたいでしょう。

その時にCubaseのマスターフェーダーでオケのレベルを下げるとなると面倒な場合がありますよね。

そういった煩わしさを回避するのに便利な設定で、Cubaseからの2mixをDSPミキサーのフェーダーに割り当てることが可能です。

やり方は簡単で、Cubaseの画面上メニューから「デバイス」→「VST コネクション」を選択したら、次の画面で「出力」タブを選び、マスターアウトのLeft、Rightをデバイスポート(水色の欄)で「VIRTUAL1、2」に設定します。







こうすることで、DSPミキサーの「VIRTUAL1、2」に音が返ってきます。

DSPミキサー側のフェーダーは0db以上に設定できないので、プレイヤーがもっと自分の音が欲しいと要求してきた場合はCubaseの2mixを下げつつモニター(もしくはヘッドホン)のマスターレベルを上げてあげるとちょうどいいでしょう。

その際、2つのフェーダーはステレオリンクしておけば1つのフェーダーでコントロールできるので便利です。

フェーダーの名前の部分をクリックすると下の画像のように表示されるので、「STEREO」の「LINK」をクリックして点灯させます。







さて、いかがでしたでしょうか。

そのうち各プラグインの実践的な使い方の例を書いてみたいと思います。

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