2016年7月17日日曜日

生ピアノとソフト音源のピアノを比較してみた

2000年代に入りコンピュータのリソースが向上した結果、ソフト音源の性能は飛躍的に進化しました。

楽器を問わず生音をサンプリングしたソフト音源はたくさんありますよね。

その中でも、今回はポップスの制作における主要パートの1つであるピアノにスポットを当てた記事を書いてみます。

尚、サンプリングとは使っているピアノのモデルや機材、マイキング、フレーズも微妙に違うので単純比較というわけではありません。

レンタルスタジオに置いてあるピアノで一般的な録り方をした場合、ソフト音源とどれぐらい違う結果が得られるのかを比較するという趣旨で書きます。



■今回比較する生ピアノとソフト音源のモデル

生ピアノは都内某スタジオにあるYAMAHA CL5で、マイクはAKG C451B×2、プリアンプはUAD-2版のNEVE 1073を通して録りました。

ソフト音源の方は過去記事で紹介したSynthogy Ivory II Grand PianosのYAMAHA C7 Grandで書き出しています。

オーディオ書き出し時の注意事項も書いてあるので併せて読んでみて下さい。

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ちなみに、C7のサンプルを選んだ理由は生ピアノと同じメーカーだからです。



■まずは聞いてみましょう

先入観を無くすためにどちらを使っているのかはあえて伏せておきます。

まずは聞いてみて下さい。



■Piano 1




■Piano 2





明らかに違いますね。

正解はわかりましたか?

「Piano 1」が生音、「Piano 2」がIvoryの音です。

生音は録ったままで、EQもコンプも使っていません。

マイキングはこんな感じです。






(左)1loveのボーカル吉田丞氏 (右)ピアニスト山田昌平



IvoryはLevel 16でボイス数を64に変更した以外は全てデフォルトのままで書き出しています。



■音を聞き比べた印象

生ピアノの方が中域が強く自然な低音が出ています。

低音はレベルバランスの問題もあるかと思いますが。

Ivoryの方はドンシャリ(低音と高音が強い)で、元々EQでしっかり音が作られている感じ。

ちょっと低音が出過ぎているかな。

アタックが非常に明瞭です。

空気感は言葉にするのが難しいですが、なんだか違いますね。

それと、僕の中では重要な要素なのですが、生ピアノの方が倍音が自然に感じます。

ピアノはレンジが広い上に弦が張ってある構造なので、共鳴した倍音成分の混ざり具合が個性として出るんです。

このあたりは生ピアノの方が扱いやすいかな。

ちなみに、生音をIvoryっぽいEQバランスにした音も作ってみました。






EQ的には近くても、音の質感やタッチのニュアンスが全然違うのがわかるかと思います。



■どう使い分けたらいいのか

それぞれに向き・不向きがありますが、楽器の本数が少ないアコースティック系の曲だと生音、バンドもののように他に様々な音が鳴っている曲だとIvoryが合うような気がします。

一番差が大きい部分はアタックの明瞭さだと思うのですが、そこを曲によって使い分けるイメージでしょうか。

優しいタッチの曲は生ピアノで、音ヌケがいい分、バンドものだとIvoryを使いたくなります。



■まとめ

いくらソフト音源が進化したとはいえ、やはり差がありますね。

優劣の話ではなく嗜好的な差という意味です。

最近の制作では予算的にどうしてもソフト音源で済ませてしまうことが多いかと思いますが、生音には生音にしかない良さがあります。

今回ご協力頂いた1loveの吉田さんはそこにこだわりがあり、ピアノと歌だけの部分はどうしても生音で勝負したいとおっしゃっていました。

僕は音楽人としてそういうスタンスがすごく好きです。

こだわりのある方はぜひ生ピアノでのミックスにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

ちなみにですが、実はこのピアノが入っている音源はまだ完成しておりません。

リリースされたらボーカル入りでどういったミックスにしたかレポートを書いてみようと思います。

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